吾輩は猫である76

吾輩は猫である76

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「それから歌舞伎座へいっしょに行ったのかい」と迷亭が要領を得んと云う顔付をして聞く。
“然后跟老婆一起去歌舞伎占座位了吗?”迷亭一副不明就里的样子问道。

「行きたかったが四時を過ぎちゃ、這入れないと云う細君の意見なんだから仕方がない、やめにしたさ。もう十五分ばかり早く甘木先生が来てくれたら僕の義理も立つし、妻も満足したろうに、わずか十五分の差でね、実に残念な事をした。考え出すとあぶないところだったと今でも思うのさ」
“想去啊,但是已经过了四点了,老婆说这时候就算过去也进不去,没办法,就没去成。如果甘木医生能提前来个十五分钟,我的道理也实现了,老婆的愿望也得到满足了,唉,仅仅十五分钟啊,真是太遗憾了。不过回想起来,当时的情况也是真的危险。”

語り了った主人はようやく自分の義務をすましたような風をする。これで両人に対して顔が立つと云う気かも知れん。
主人这番话把责任推脱得干干净净,说不定还觉得这个故事能让对面两人对自己的责任心肃然起敬呢。

寒月は例のごとく欠けた歯を出して笑いながら「それは残念でしたな」と云う。
寒月照例露出缺失的门牙笑了起来:“真是够遗憾的。”

迷亭はとぼけた顔をして「君のような親切な夫を持った妻君は実に仕合せだな」と独り言のようにいう。障子の蔭でエヘンと云う細君の咳払いが聞える。
迷亭却故意做出滑稽的表情,自言自语地说:“有你这么体贴的老公,你老婆真的太幸福了。”障子门后面,女主人重重地咳嗽了一声。

吾輩はおとなしく三人の話しを順番に聞いていたがおかしくも悲しくもなかった。人間というものは時間を潰すために強いて口を運動させて、おかしくもない事を笑ったり、面白くもない事を嬉しがったりするほかに能もない者だと思った。吾輩の主人の我儘で偏狭な事は前から承知していたが、普段は言葉数を使わないので何だか了解しかねる点があるように思われていた。その了解しかねる点に少しは恐しいと云う感じもあったが、今の話を聞いてから急に軽蔑したくなった。かれはなぜ両人の話しを沈黙して聞いていられないのだろう。負けぬ気になって愚にもつかぬ駄弁を弄すれば何の所得があるだろう。エピクテタスにそんな事をしろと書いてあるのか知らん。要するに主人も寒月も迷亭も太平の逸民で、彼等は糸瓜のごとく風に吹かれて超然と澄し切っているようなものの、その実はやはり娑婆気もあり慾気もある。競争の念、勝とう勝とうの心は彼等が日常の談笑中にもちらちらとほのめいて、一歩進めば彼等が平常罵倒している俗骨共と一つ穴の動物になるのは猫より見て気の毒の至りである。ただその言語動作が普通の半可通のごとく、文切り形の厭味を帯びてないのはいささかの取り得でもあろう。
我静静听完三个人的故事,既不觉得奇怪,也不觉得悲伤。人类真是没本事,只会为了消磨时间逞强做唇齿运动,为普通的事情大笑,为无聊的事情开心。之前我就听说过主人的任性和狭隘,只不过他在家不怎么开口,我也无从亲身经历。本以为我不知道的那一面还蛮恐怖,今天见识之后,突然特别鄙视主人。为什么在其他二位讲话的时候,主人从来不能静静地做一个听众呢?像现在这样不服气乱说一通,有什么好处呢?爱比克泰德在书里这么教他的吗?不过,主人也好寒月也好迷亭也好,都是一介平民,表面看起来超然世外,就像一根藤上结的丝瓜,只会单纯地随风摇摆。实际上,他们身上也充斥着功利之心,填塞着各种欲望。从他们日常聊天上就能看出,彼此之间的竞争之心无比强烈,满心都是如何盖过对方的风头。说白了,他们跟自己最看不上的凡夫俗子是一丘之貉,在本猫看来,真是可怜之至。只不过他们的言谈举止不像那些半吊子,做事情没那么守旧,想来这还算一丝可取之处。
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