吾輩は猫である75

吾輩は猫である75

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「それじゃ奮発して行こうかな、と一ぷくふかしているとようやく甘木先生が来た。うまい注文通りに行った。が容体をはなすと、甘木先生は僕の舌を眺めて、手を握って、胸を敲いて背を撫でて、目縁を引っ繰り返して、頭蓋骨をさすって、しばらく考え込んでいる。「どうも少し険呑のような気がしまして」と僕が云うと、先生は落ちついて、「いえ格別の事もございますまい」と云う。「あのちょっとくらい外出致しても差支えはございますまいね」と細君が聞く。「さよう」と先生はまた考え込む。「御気分さえ御悪くなければ……」「気分は悪いですよ」と僕がいう。「じゃともかくも頓服と水薬を上げますから」「へえどうか、何だかちと、危ないようになりそうですな」「いや決して御心配になるほどの事じゃございません、神経を御起しになるといけませんよ」と先生が帰る。三時は三十分過ぎた。下女を薬取りにやる。細君の厳命で馳け出して行って、馳け出して返ってくる。四時十五分前である。四時にはまだ十五分ある。すると四時十五分前頃から、今まで何とも無かったのに、急に吐気を催おして来た。細君は水薬を茶碗へ注いで僕の前へ置いてくれたから、茶碗を取り上げて飲もうとすると、胃の中からげーと云う者が吶喊して出てくる。やむをえず茶碗を下へ置く。細君は「早く御飲みになったら宜いでしょう」と逼る。早く飲んで早く出掛けなくては義理が悪い。思い切って飲んでしまおうとまた茶碗を唇へつけるとまたゲーが執念深く妨害をする。飲もうとしては茶碗を置き、飲もうとしては茶碗を置いていると茶の間の柱時計がチンチンチンチンと四時を打った。さあ四時だ愚図愚図してはおられんと茶碗をまた取り上げると、不思議だねえ君、実に不思議とはこの事だろう、四時の音と共に吐き気がすっかり留まって水薬が何の苦なしに飲めたよ。それから四時十分頃になると、甘木先生の名医という事も始めて理解する事が出来たんだが、背中がぞくぞくするのも、眼がぐらぐらするのも夢のように消えて、当分立つ事も出来まいと思った病気がたちまち全快したのは嬉しかった」

“我正打算抽一根烟就硬着头皮出门,甘木医生进门了。刚刚好。甘木医生让我伸出舌头给他看,然后又给我把脉、听胸、摸背、翻眼皮、敲头盖骨,然后就陷入了沉思。‘看您这样,是说我病得很严重吗?’我小心翼翼地问道。‘不不,倒没什么大事。’医生平静地说。‘我们一会儿想出门,应该没什么问题吧?’老婆插嘴问道。‘这样啊……’医生又沉思了一下,‘只要你不觉得恶心……’ ‘还是挺恶心的。’我回答。‘那我给你开点一次性的口服剂吧。’ ‘啊,这么说,病情不会恶化了,对吧?’ ‘放心吧,不是什么大病,别胡思乱想了。’医生说完就告辞了。这时已经是三点三十分。女仆出门取药,老婆严厉地要求她跑步来回。等她回来,时间已经变成了三点四十五分,离四点只有十五分钟了。就在此时,我忽然又是一阵恶心想吐。老婆把口服剂倒进茶杯中放在我前面,我拿起来正要喝,忽然胃里响起了一声‘咕——’。于是我把杯子放下,老婆马上说:‘还是赶紧喝了吧。’我也觉得,不早点喝完出门,道理上说不通。于是狠下心来再次把杯子端到嘴边,结果胃里响起了更大一声‘咕——’。就这么端起放下,端起放下,餐厅的大钟当当当当响了四下。四点了,没有时间磨磨蹭蹭了!我再次端起茶杯,你们猜怎么着,不可思议的事情发生了。随着四点的钟声响起,我忽然觉得不恶心了,咕咚咕咚喝完了口服剂。十分钟后,我感慨甘木医生不愧被尊为名医,喝了药身体不觉得冷了,眼前也不再天旋地转,刚才的一切疼痛就像梦一样消散了。看来病已经全好了,我高兴得要命。”
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用户评论
  • 密奥达卡斯的女王

    亲 都读完了么?我的书后面还有几页内容

    奈奈学日语 回复 @密奥达卡斯的女王: 是的还没读完,不过我生病住院了所以……我会尽量补全的😊