山梨 3

山梨 3

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『お魚は……。』
 その時(とき)です。俄(にわか)に天井(てんじょう)に白い泡がたって、青(あお)びかりのまるでぎらぎらする鉄砲弾(てっぽうだま)のようなものが、いきなり飛込(とびこ)んで来ました。
 兄(にい)さんの蟹(かに)ははっきりとその青(あお)いもののさきがコンパスのように黒く(くろく)尖(とが)っているのも見ました。と思(おも)ううちに、魚(さかな)の白(しろ)い腹(はら)がぎらっと光(ひか)って一ぺんひるがえり、上(うえ)の方(ほう)へのぼったようでしたが、それっきりもう青(あお)いものも魚(さかな)のかたちも見(み)えず光の黄金(きん)の網(もう)はゆらゆらゆれ、泡(あわ)はつぶつぶ流(なが)れました。
 二疋(にひき)はまるで声(こえ)も出(で)ず居(い)すくまってしまいました。
 お父さんの蟹(かに)が出(で)て来ました。
『どうしたい。ぶるぶるふるえているじゃないか。』
『お父さん、いまおかしなものが来たよ。』
『どんなもんだ。』
『青(あお)くてね、光(ひか)るんだよ。はじがこんなに黒(くろ)く尖(とが)ってるの。それが来(き)たらお魚(さかな)が上(うえ)へのぼって行ったよ。』
『そいつの眼(め)が赤(あか)かったかい。』
『わからない。』
『ふうん。しかし、そいつは鳥(とり)だよ。かわせみと云(い)うんだ。大丈夫(だいじょうぶ)だ、安心(あんしん)しろ。おれたちはかまわないんだから。』
『お父さん、お魚(さかな)はどこへ行ったの。』
『魚(さかな)かい。魚(さかな)はこわい所(ところ)へ行(い)った』
『こわいよ、お父さん。』
『いいいい、大丈夫(だいじょうぶ)だ。心配(しんぱい)するな。そら、樺(かば)の花(はな)が流(なが)れて来た。ごらん、きれいだろう。』
 泡(あわ)と一緒(いっしょ)に、白(しろ)い樺の花びらが天井(てんじょう)をたくさんすべって来ました。
『こわいよ、お父さん。』弟(おとうと)の蟹(かに)も云(い)いました。
 光(ひかり)の網(あみ)はゆらゆら、のびたりちぢんだり、花びらの影(かげ)はしずかに砂(すな)をすべりました。

“鱼”

  接下来的故事就是从这个时候开始的。

  本来安安静静的水面突然泛起了白色的水泡,一道蓝色的光如同闪光的子弹一样,猛地射进了水里。

  螃蟹哥哥看得再清楚不过了,那个蓝色的东西的前面,就像是一只又黑又尖的圆规。刚想到这里,它就看见那条鱼身上白色的肚皮闪了一下,然后翻着身子,耷拉着脑袋,浮到水面上去了。之后,它就再也看不到那个蓝色的东西和鱼的影子了,只剩下漂荡的金黄色的光网和一个个水泡。

  两只小螃蟹吓得不敢吱声,趴在那里一动也不动。

  过了一会儿,螃蟹爸爸来了。

  “怎么了?怎么躲在这儿直打哆嗦呢?”

  “爸爸,刚才我们看见一个奇怪的家伙。”

  “奇怪的家伙?那是什么?”

  “那个奇怪的家伙蓝蓝的,还闪着光,有个又黑又尖的头。它一来,鱼就到上面去了。”

  “那家伙的眼睛是不是红的呀?”

  “不知道啊。”

  “噢。听上去,它应该是只鸟啊。它叫翠鸟。不要紧,放心吧。它不会把咱们怎么样的。”

  “爸爸,那鱼去哪儿了?”

  “鱼吗?鱼去了一个可怕的地方。”

  “我害怕,爸爸!”

  “不怕不怕,没关系,别怕。你们看,桦树花漂来了。快看啊,多漂亮啊!”

  数不清的白桦的花瓣,和水泡一起从水面上沉了下来。

  阳光照进水里织成的光网摇荡着,伸缩着,花瓣的影子从沙子上面缓缓地滑了过去。

日语:宫泽贤治

中文:来源网络


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