20181021天声人语-小帆

（天声人語）データの大海原(おおうなばら)を泳ぐ
２０１８年１０月２１日　日曜日
シーズンを通してみればバント1や盗塁(とうるい)0、ヒットエンドラン4の成功率は低く、自滅行為――。大リーグの常識を覆(くつがえ)した3のは、野球の素人たちが持ち込んだ統計学的手法(しゅほう)だった▼
セイバーメトリクス7と呼ばれ、蓄積(ちくせき)された大量の数値(すうち)1をコンピューターで解析する。戦術(せんじゅつ)0や選手(せんしゅ)1の評価の指標を否定され、現場の監督やスカウト2は猛反発(もうはんぱつ)3した。その潮目(しおめ)3は２０００年に変わった。貧乏球団(びんぼうきゅうだん)5のアスレチックス4が新しい指標で低年俸(ていねんぽう)3の選手を集め、優勝争いの常連(じょうれん)0となったからだ▼
最近は軍事用レーダーと高性能カメラの仕組みを全球場(ぜんきゅうじょう)3で導入し、データを利用できるよう公開している。興味深(きょうみぶか)い4一般の研究を吸(す)い上(あ)げる4仕組みだ。投手(とうしゅ)1なら球(たま)2の速度(そくど)1や回転数(かいてんすう)3、軌道(きどう)0の変化をチェックできる。技術の上達(じょうたつ)0に加え、投(な)げ込(こ)みに頼らない効率的な練習やケガ防止の研究も可能だ▼
同じ取り組みは国内でも進む。データスタジアム社(しゃ)8（東京）は契約した球団(きゅうだん)に独自の指標で分析したデータを提供する。かつてどんぶり勘定(かんじょう)3だった選手の評価や年俸交渉(ねんぽうこうしょう)5に活用されている▼
金沢慧(かなざわとし)5さん（３３）はそんなアナリスト3の一人だ。野球は高校まで。大学は経済学部で統計を学んだ。アルバイトで野球のコラムを書いた。野球と統計分析、伝える力。「一つの分野では平凡(へいぼん)でも、異(こと)なる3領域(りょういき)を三(みっ)つ持(も)てば1活躍できる」。そう考えたという▼
セイバーメトリクスを推進したのも、野球の専門家ではなかった。ビッグデータの大海原(おおうなばら)3では、多様な人材が活躍する。そこが面白い。

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