ある男のし

ある男のし

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用户评论
  • Reina4649

    著者:岡本 かの子 読み手:西村 文江  A! 女学校では、当時有名な話でありました。それは『二時間目事件。』というのでした。  新学期が始まってから二ヶ月程後のある日、朝から二時間目の歴史の時間に起つたこと。と書きたてるほど大げさなことでもないのに、それをそれほど有名にしたのは、全く、その男の――つまり、その歴史の時間での先生である溝口文学士の性格によるのでした。

    Reina4649 回复 @Reina4649: 一たいが、小づくりで、薄皮膚の色の白いやはらかに素直な毛をそっとわけて声も細々と、歴史という遠い昔の夢をロマンチックにおどおどと語る――ただ、少しほんの少しではあるけれども、見栄坊に気取って年頃の女生徒への多少の対感意識はあったようでした。否々、それが内所には実に非常に多かつた為に遂にはその件が次のやうなあまり意外な結果となつてしまつたのでありましよう。  その先生が、或る日、つまり新学期が始まって二ヶ月程してからの六月始めの朝から二時間目の歴史の時間に。 『そして、その時藤原の鎌足公は……』