女生徒(十七)

女生徒(十七)

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 あの日は、うちのほうの大掃除だったので、台所直しさんや、畳屋さんもはいっていて、お母さんも箪笥《たんす》のものを整理して、そのときに、この風呂敷が出て来て、私がもらった。綺麗な女らしい風呂敷。綺麗だから、結ぶのが惜しい。こうして坐って、膝の上にのせて、何度もそっと見てみる。撫でる。電車の中の皆の人にも見てもらいたいけれど、誰も見ない。この可愛い風呂敷を、ただ、ちょっと見つめてさえ下さったら、私は、その人のところへお嫁に行くことにきめてもいい。本能、という言葉につき当ると、泣いてみたくなる。本能の大きさ、私たちの意志では動かせない力、そんなことが、自分の時々のいろんなことから判って来ると、気が狂いそうな気持になる。どうしたらよいのだろうか、とぼんやりなってしまう。否定も肯定もない、ただ、大きな大きなものが、がばと頭からかぶさって来たようなものだ。そして私を自由に引きずりまわしているのだ。引きずられながら満足している気持と、それを悲しい気持で眺めている別の感情と。なぜ私たちは、自分だけで満足し、自分だけを一生愛して行けないのだろう。本能が、私のいままでの感情、理性を喰ってゆくのを見るのは、情ない。ちょっとでも自分を忘れることがあった後は、ただ、がっかりしてしまう。あの自分、この自分にも本能が、はっきりあることを知って来るのは、泣けそうだ。お母さん、お父さんと呼びたくなる。けれども、また、真実というものは、案外、自分が厭だと思っているところに在るのかも知れないのだから、いよいよ情ない。


      那天家里大扫除,所以修理厨房的工人和榻榻米店的人也都来了,妈妈还整理了衣橱,这张包袱巾就是在那个时候被找出来的,我便要了过来。这是一张漂亮的包袱巾,很有女人味儿。这么漂亮,如果打结系起来的话就可惜了。我就这么坐着,把它放在膝盖上,悄悄地看了又看。抚摸着它。很想请电车里的这些人都看一看它,但是谁都没看。如果有人能够看看这张可爱的包袱巾,哪怕只是稍微看上一眼,那么让我嫁给那个人都没问题。一想到“本能”这个词,我就想要哭出来。本能的作用何其大,它的力量是我们的意志所无法改变的。当每每从自身经历的各种事情中感受到这一点时,就会觉得自己快要疯了。该怎么做才好呢?一脸茫然。不是否定或肯定的问题,而是一件庞然大物猛地迎头盖压下来,是这样的感觉。然后,随意地拽着我到处转来转去。我任由其拖着,心里满足的同时还有另外一种感情存在,觉得自己正带着一种悲哀的情绪望着这一切。为什么我们不能仅靠自己就获得满足呢?为什么我们不能一辈子只爱自己呢?看着本能逐渐吞噬我既有的感情和理性,真是难受。在片刻地忘掉自己之后,剩下的只有沮丧。在这个自己或那个自己之中都有本能明确地存在着,渐渐明白这一点后忍不住想哭。想喊妈妈,想喊爸爸。可是,又或者真实正出乎意料地存在于自己觉得讨厌的那些地方,这样一想更加觉得难为情。

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用户评论
  • 莲宸

    有视频学日语吗老师。喜欢你的课