花咲かじいさん（开花爷爷）

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                 花咲(はなさ)かじいさん

  昔々(むかしむかし)、あるところに正直(しょうじき)なおじいさんとおばあさんが住(す)んでいました。この夫婦(ふうふ)には子供(こども)がいませんでした。それで、ポチという子犬(こいぬ)を子供(こども)の代(か)わりにかわいがっていました。とても晴(は)れたある朝(あさ)、おじいさんはポチを連(つ)れて畑(はたけ)仕事(しごと)に出(で)かけました。おじいさんが仕事(しごと)をしている間(あいだ)、ポチはおじいさんのそばを走(はし)り回(まわ)って遊(あそ)んでいましたが、急(きゅう)に畑(はたけ)の隅(すみ)に止(と)まって何(なに)か始(はじ)めました。おじいさんが近(ちか)づくと、ポチは一生懸命(いっしょけんめい)に前足(まえあし)で土(つち)を掘(ほ)っていました。「ポチや。いったい何(なに)をしているんだ。そんなに土(つち)を掘(ほ)って、大(おお)きな虫(むし)でもいるのか。」とおじいさんが言(い)うと「ワンワン！」とポチは大(おお)きな声(こえ)で吠(ほ)えました。そして、おじいさんのところまで走(はし)って来(き)て、おじいさんの服(ふく)を口(くち)でくわえて引(ひ)っ張(ば)り始(はじ)めました。おじいさんは困(こま)って、「ポチ、だめだよ。今(いま)、忙(いそが)しいから、おまえの相手(あいて)はできないよ。」と言(い)うと、ポチはさらに大声(おおごえ)で吠(ほ)えました。「いったい何(なに)があったのかな…。」と、ポチが掘(ほ)っている穴(あな)に近(ちか)づいてみると、「ここ掘(ほ)れ、ワンワン！ここ掘(ほ)れ、ワンワン！」とポチが吠(ほ)えました。

  「おお、よしよし。わかったよ、掘(ほ)ってみよう。」と、おじいさんはポチの言(い)うとおり、くわでザクッザクッと土(つち)を掘(ほ)ってみると、カチンと固(かた)い音(おと)がして、ピカっと光(ひか)るものが見(み)えました。さらに掘(ほ)っていくと、何(なん)と小判(こばん)がザクザクと山(やま)のように出(で)てきました。おじいさんはびっくりして、「うわぁ！これは、いったい何(なん)だ？どうしたことだ！」と、慌(あわ)てておばあさんを呼(よ)びました。おばあさんも小判(こばん)を見(み)て、「おやまあ！こんなところに何(なん)て不思議(ふしぎ)なことが…。」と、二人(ふたり)はびっくりするやら嬉(うれ)しいやらで、よいしょよいしょと小判(こばん)を袋(ふくろ)につめて、家(いえ)に持(も)って帰(かえ)りました。

  正直(しょうじき)なおじいさんとおばあさんの隣(となり)には、欲(よく)の深(ふか)いおじいさんとおばあさんが住(す)んでいました。欲(よく)の深(ふか)いおじいさんとおばあさんは、小判(こばん)の話(はなし)を聞(き)いて、すぐに正直(しょうじき)なおじいさんの家(いえ)に行(い)って、ポチを借(か)りてきました。欲(よく)の深(ふか)いおばあさんも、「隣(となり)の家(いえ)に小判(こばん)が出(で)たんだから、うちの畑(はたけ)にだってたくさん宝物(たからもの)が埋(う)まっているはずだよ。さあ、早(はや)く掘(ほ)りましょう。」と言(い)って、欲(よく)の深(ふか)いおじいさんを急(いそ)がせました。早速(さっそく)、二人は借(か)りてきたポチを畑(はたけ)に連(つ)れて行(い)って、「ポチ、さあ、どこに宝物(たからもの)が埋(う)まっているのか早(はや)くさがせ！さがせ！」と、無理(むり)やりポチを引(ひ)っ張(ば)りました。ポチは引(ひ)っ張(ば)られて、苦(くる)しくてたまりません。ポチは余(あま)りにも痛(いた)いので、足元(あしもと)の土(つち)を掘(ほ)りながら、「キャン、キャン！苦(くる)しい！」と吠(ほ)えました。すると、二人(ふたり)は「おお！ここか、宝物(たからもの)があるところは？たくさんあるようだ。」と言(い)って、一生懸命(いっしょけんめい)に掘(ほ)り始(はじ)めました。ところが、土(つち)の中(なか)から出(で)てきたのは、何(なん)と石(いし)ころばかりでした。その上(うえ)、くさい臭(にお)いまでしてきたので、二人(ふたり)は怒(おこ)って「何(なん)だ！何(なに)も出(で)てこないじゃないか！このうそつき犬(いぬ)、死(し)んでしまえ！」と、ポチをなぐりつけ、殺(ころ)してしまいました。

  正直(しょうじき)なおじいさんとおばあさんは、ポチが死(し)んで、とても悲(かな)しんで泣(な)きました。「ポチや、許(ゆる)してくれよ。かわいいおまえをお隣(となり)に貸(か)したのが悪(わる)かったよ。私(わたし)がバカだった。許(ゆる)してくれよ、ポチ。」と言(い)って、オンオンと泣(な)きました。正直(しょうじき)なおじいさんとおばあさんは、ポチの死体(したい)を家(いえ)の庭(にわ)に埋(う)めました。そして、その横(よこ)に小(ちい)さな松(まつ)の木(き)を植(う)えました。すると、不思議(ふしぎ)なことに、毎日(まいにち)ずんずんと大(おお)きくなって、立派(りっぱ)な大木(たいぼく)になりました。「あぁ、ポチの形見(かたみ)の木(き)がこんなに大(おお)きくなった。ありがたいことだね。」と喜(よろこ)んで、早速(さっそく)木(き)を切(き)り、大(おお)きな臼(うす)を作(つく)りました。そして、二人(ふたり)は、「この臼(うす)でもちをついてポチに供(そな)えてあげましょう。」と言(い)いながら、ぺったんこ、ぺったんこと、もちつきを始(はじ)めました。すると、臼(うす)の中(なか)のもち米(ごめ)が急(きゅう)に増(ふ)えて、あっという間(ま)に山(やま)ほどのもち米(ごめ)が出(で)てきました。

   この話(はなし)を聞(き)いた欲(よく)の深(ふか)いおじいさんとおばあさんはうらやましくてたまりません。二人(ふたり)は、「早速(さっそく)臼(うす)を借(か)りてこよう。きっとあの臼(うす)でもちをついたら、たくさんのもち米(ごめ)が出(で)てくるに違(ちが)いない。楽(たの)しみだ、早(はや)くしよう。」と言(い)って、正直(しょうじき)なおじいさんの家(いえ)に行(い)って、臼(うす)を借(か)りてきました。そして、すぐにお米(こめ)を入(い)れてぺったんこ、ぺったんこつき始(はじ)めました。ところが、どんなに一生懸命(いっしょうけんめい)ついても、お米(こめ)が一(ひと)つも増(ふ)えません。それどころか、臼(うす)の中(なか)からくさい臭(にお)いがしてきました。「くさい、くさい！これはたまらない。このバカ臼(うす)は米(こめ)も出(で)ないじゃないか。こんなものは役(やく)に立(た)たないから、燃(も)やしてしまえ。」と怒(おこ)って、欲(よく)の深(ふか)いおじいさんとおばあさんは、臼(うす)を割(わ)って燃(も)やしてしまいました。それを聞(き)いた正直(しょうじき)なおじいさんとおばあさんはがっかりしました。「形見(かたみ)の臼(うす)を燃(も)やしてしまったのか。それは惜(お)しいことをした。大切(たいせつ)な臼(うす)だったんだが…。でも、もう仕方(しかた)がない。それじゃ、残(のこ)った灰(はい)でももらって帰(かえ)りましょう。」と言(い)って、灰(はい)をざるに入(い)れて、家(いえ)に持(も)って帰(かえ)りました。

   「おばあさんや、ポチの形見(かたみ)の臼(うす)が灰(はい)になってしまったよ。本当(ほんとう)に惜(お)しいことをした。」と、おじいさんがおばあさんと話(はな)していると、手(て)に持(も)っていた灰(はい)が急(きゅう)に風(かぜ)に吹(ふ)かれて近(ちか)くにあった木(き)にふりかかりました。すると、不思議(ふしぎ)なことに、今(いま)まで枯(か)れていた木(き)がいっせいに花(はな)を咲(さ)かせました。周(まわ)りはパァーと明(あか)るくなり、とてもにぎやかになりました。「これは不思議(ふしぎ)な灰(はい)だ。あぁ、きれいだね。そうだ、枯(か)れ木(き)に花(はな)を咲(さ)かせて、みんなを喜(よろこ)ばせてあげよう。きっとみんな大喜(おおよろこ)びするに違(ちが)いない。」そう言(い)って、ざるの中(なか)に灰(はい)を入(い)れて、あちらこちらの枯(か)れ木(き)に灰(はい)をまいて歩(ある)きました。

   「さあさ、枯(か)れ木(き)に花(はな)を咲(さ)かせましょう。花咲(はなさ)かじいさんですよ、さあさ、見(み)てください。」と叫(さけ)びながら、道(みち)を歩(ある)いて行(い)きました。すると、遠(とお)くからお殿様(とのさま)の行列(ぎょうれつ)がやってきました。お殿様(とのさま)は「ほう、珍(めずら)しいじいさんがいるものだ。すぐここに呼(よ)んで、芸(げい)を見(み)せるようにしなさい。」と、家来(げらい)に命令(めいれい)しました。お殿様(とのさま)に呼(よ)ばれたおじいさんは、「はい、やって見(み)せます。やらせてください。ちちんぷいぷいちちんぷいぷい。枯(か)れ木(き)、お花(はな)が咲(さ)け！」と言(い)うと、枯(か)れ木(き)は急(きゅう)に花盛(はなざか)りになりました。「おぉ、みごとだ！こんなに楽(たの)しい花見(はなみ)は初(はじ)めてだ。花咲(はなさ)かじいさん、ありがとうよ。」と、お殿様(とのさま)はおじいさんにたくさんのごほうびをくれました。

  またまたこのことを聞(き)いた欲(よく)の深(ふか)いおじいさんは、「隣(となり)のじいさんができるなら、私(わたし)にだってできないことはない。」と言(い)って、家(いえ)に残(のこ)っていた灰(はい)を全部(ぜんぶ)ざるに入(い)れて準備(じゅんび)しました。何日(なんにち)か経(た)って、殿様(とのさま)の行列(ぎょうれつ)がまたやってきました。欲(よく)の深(ふか)いおじいさんは急(いそ)いで道(みち)に走(はし)って行(い)って言(い)いました。「さあ、枯(か)れ木(き)に花(はな)を咲(さ)かせる花咲(はなさ)かじいさんです。枯(か)れ木(き)に花(はな)を咲(さ)かせます。」と、正直(しょうじき)なおじいさんの真似(まね)をして言(い)いました。お殿様(とのさま)は、「おお、あの花咲(はなさ)かじいさんか。もう一度(いちど)やってくれるのか。」と言(い)うと、欲(よく)の深(ふか)いじいさんは早速(さっそく)桜(さくら)の木(き)に登(のぼ)って、「ちちんぷいぷい、枯(か)れ木(き)よ、花(はな)が咲(さ)け！」と、灰(はい)をまいて叫(さけ)びました。しかし、花(はな)は一(ひと)つも咲(さ)きません。欲(よく)の深(ふか)いじいさんは慌(あわ)てて灰(はい)を全部(ぜんぶ)まきましたが、それでも花(はな)は一(ひと)つも咲(さ)きません。それどころか、灰(はい)は風(かぜ)に吹(ふ)かれてお殿様(とのさま)や家来(けらい)の目(め)や鼻(はな)に入(はい)ってしまいました。「あぁ、痛(いた)い、痛(いた)い。あれは偽物(にせもの)の花咲(はなさ)かじいさんだ。それ、つかまえろ。悪(わる)い奴(やつ)だ、連(つ)れて行(い)け！」と、お殿様(とのさま)は家来(けらい)に命令(めいれい)しました。欲張(よくば)りのおじいさんは縄(なわ)にしばられ、とうとう連(つ)れて行(い)かれてしまいました。