塩吹きうす（喷盐的磨）

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                                 塩吹きうす

  むかしむかし、あるところにお父(とう)さんと二人(ふたり)の息子(むすこ)が住(す)んでいました。お父(とう)さんは馬(うま)を50(ごじゅう)頭(とう)と牛(うし)を1000(せん)頭(とう)持(も)っていました。ある日(ひ)、お父(とう)さんは働(はたら)きすぎで病気(びょうき)になってしまいました。お父(とう)さんは息子(むすこ)二人(ふたり)を呼(よ)んで、「私(わたし)が死(し)んだら、二人(ふたり)で馬(うま)と牛(うし)は半分(はんぶん)ずつにしなさい。」と、言(い)って、死(し)んでしまいました。欲張(よくば)りなお兄(にい)さんは、お父(とう)さんの言(い)ったことを忘(わす)れて、弟(おとうと)に馬(うま)を10(じゅう)頭(とう)と牛(うし)を20(にじゅう)頭(とう)しかあげませんでした。そして、残(のこ)った馬(うま)と牛(うし)は、お兄(にい)さんが全部(ぜんぶ)もらってしまいました。でも、おとなしい弟(おとうと)はお兄(にい)さんに何(なに)も言(い)わず、一生懸命(いっしょうけんめい)働(はたら)きました。

　すると、ある日(ひ)、白(しろ)いひげのおじいさんが弟(おとうと)を訪(たず)ねてきました。「私(わたし)は神様(かみさま)に頼(たの)まれて来(き)たのですが、馬(うま)と牛(うし)を15(じゅうご)頭(とう)貸(か)してもらえないでしょうか。」と言(い)いました。「神様(かみさま)のためなら、喜(よろこ)んで差(さ)し上(あ)げます。」と弟(おとうと)は言(い)って、白(しろ)いひげのおじいさんに馬(うま)と牛(うし)をすぐに渡(わた)してあげました。おじいさんは喜(よろこ)んで、「ありがとうございます。でも、こんなにたくさんもらうのは悪(わる)いから、代(か)わりにこの石(いし)うすをあげましょう。」と言(い)い、そして、「これは普通(ふつう)の石(いし)うすではありません。自分(じぶん)のほしいものの名前(なまえ)を言(い)って、ぐるぐる回(まわ)すと、何(なん)でも出(で)てくる魔法(まほう)のうすですよ。」と言(い)いました。「そんな特別(とくべつ)なものを、ありがとうございます。」と弟(おとうと)はお礼(れい)を言(い)いました。

　そして、弟(おとうと)は石(いし)うすを回(まわ)してみました。「米(こめ)よ、出(で)ろ出(で)ろ！」と言(い)うと、米(こめ)がざっくり出(で)てきました。「おいしいお菓子(かし)、出(で)ろ出(で)ろ！」と言(い)うと、お菓子(かし)が出(で)てきます。「これはなんてすばらしい石(いし)うすだろう。みんなを呼(よ)んで、ごちそうしてあげよう！」と思(おも)って、弟(おとうと)はみんなを呼(よ)んできました。「さとう、出(で)ろ出(で)ろ！お菓子(かし)、出(で)ろ出(で)ろ！」と言(い)うと、どんどん言(い)ったものが出(で)てくるので、「あぁ、おもしろい！すごいね！」と、みんなとても喜(よろこ)んで、ムシャムシャ、ポリポリ食(た)べました。「今度(こんど)は甘(あま)いものじゃなくて、辛(から)いものも出(で)るかな。」と言(い)うと、辛(から)いものも出(で)てきました。弟(おとうと)はうれしくなって、「じゃあ、今度(こんど)は塩(しお)を出(だ)しましょう。塩(しお)よ、出(で)ろ出(で)ろ！」と言(い)って、みると、やはりどっさり出(で)てきました。

　お兄(にい)さんは弟(おとうと)がぐるぐると石(いし)うすを回(まわ)すのをずっと見(み)ていました。お兄(にい)さんは石(いし)うすがとてもほしくなりました。そして、弟(おとうと)がちょっといなくなったとき、お兄(にい)さんは石(いし)うすの前(まえ)にやってきて、「この石(いし)うすは私(わたし)のものだ、もらったよ！」と言(い)うと、弟(おとうと)の石(いし)うすを持(も)って行(い)ってしまいました。弟(おとうと)はびっくりして、急(いそ)いでお兄(にい)さんの後(あと)を走(はし)って行(い)きました。「お～い、お兄(にい)さん！ひどいよ。私(わたし)の石(いし)うすを返(かえ)して。大事(だいじ)な石(いし)うすなんだから返(かえ)して！」と、大(おお)きな声(こえ)で言(い)いました。しかし、お兄(にい)さんはどんどん遠(とお)くに逃(に)げて行(い)きました。そして、海(うみ)につくと、船(ふね)に乗(の)って、急(いそ)いで行(い)ってしまいました。お兄(にい)さんを見(み)ながら、弟(おとうと)は悲(かな)しくて泣(な)きました。

　「ああ、よかった。ここまでは追(お)いかけてこられないだろう。」と、お兄(にい)さんは笑(わら)いました。すると、石(いし)うすはピューと塩(しお)を吹(ふ)き出(だ)して止(と)まらなくなりました。「ああ、何(なん)だ？何(なに)が起(お)きたんだ。ああ、どうしょう。止(と)め方(かた)がわからないよ！」と、お兄(にい)さんは困(こま)りました。すぐに船(ふね)は塩(しお)でいっぱいになり、重(おも)くて沈(しず)みそうです。「大変(たいへん)だ！沈(しず)んでしまう！石(いし)うす止(と)まれ、止(と)まれ！」と大(おお)きな声(こえ)で言(い)いました。けれども、止(と)める言葉(ことば)がわかりません。石(いし)うすはぐるぐる回(まわ)りつづけました。塩(しお)がどっさりと出(で)て、重(おも)くてブクブク沈(しず)んでいきます。「た、た、助(たす)けてくれ～！助(たす)けてくれ～！」でも、まわりには誰(だれ)もいません。とうとうお兄(にい)さんは石(いし)うすと一緒(いっしょ)に沈(しず)んででしまいました。今(いま)でも石(いし)うすは海(うみ)の深(ふか)いところでぐるぐる回(まわ)りながら、塩(しお)を出(だ)しているのでしょう。それで、海(うみ)の水(みず)は塩辛(しおから)いのだそうです。