お客さまが見えなくなるまで
私が新橋にあるカフェでコーヒーを飲みながら原稿執筆をしていたときのこと。
隣の席でずっと商談をしている2人がいました。
中堅の営業職らしき女性と、そのお客らしき中年男性。
どうやら、保険会社の女性営業が、会社員の男性に、自社の保険への切り替えを勧めているようでした。
男性は切り換えに前向きで、和気あいあいとした雰囲気。
女性営業は、ひとしきり、自分の会社の保険について説明し、男性のほうからは、「ここ、どうなってんの?」なんて、質問が出ています。
しばらくして、「じゃあ、そういうことで」と席を立つ男性。
どうも、これから会社へ戻る様子。
席から立ち上がり、「ありがとうございました! また、よろしくお願い致します!」と頭を下げる女性営業。
「んっ、よろしく」とか何とか言いながら、つかつかと、カフェの出口に向かう男性。
女性営業は、席で起立をしたまま、その後ろ姿を見送ります。
店の奥のほうの席だったので、その男性客が出口にいくまでには、たっぷりと間がありました。
それでも、その女性営業は、ずっと、男性客の背中に目を向けて立ったまま。
私はその姿を見て、「律儀だなぁ。どうせ、お客は振り返ったりしないのに」なんて思っていたのです。
ところが…。
その男性客、自動ドアからカフェの外に出て、そのドアが閉まる寸前に……。
振り返ったのです。
男性客が振り返って自分のほうを見た瞬間。
起立のまま、すかさず深々とおじぎをする女性営業。
その光景を見た途端。
私は「接待に関する本」で読んだ、次のような一節を思い出しました。
「たとえば、料亭などで接待が終わって、お店の前で、お客さまを見送るとき。お客を乗せた車が視界から完全に消えるまで頭を下げ続けなくてはならない」
「何も、そこまでしなくても……」と思いましたが、理由を読んで納得しました。
「なぜなら、自分が視界から消える瞬間まで、接待をした相手が頭を下げ続けているかどうかを、最後の最後、車の中から振り返ってチェックするお客がいるから」
私がカフェで目撃したおっさん……ではなく中年男性は、このパターンのお客だったというわけです。
よく、カフェやファミレスの店員が、オーダーのときは口角を上げまくった笑顔なのに、食器を運んでいるときやお客が帰ったあとのテーブルを拭いているときは、地球最後の日のように不機嫌な顔をしていることがありませんか。
私は、決してチェックマンではありませんが、そういう店員さんの表情を見てしまうと、見てはいけない本音の顔を見てしまったような嫌な気持ちになります。
私でさえ、そうなのです。
私が目撃したお客は、何しろ、振り返って確認するくらいのチェックマンです。
直前まで愛想よく話していた女性営業が、もう席に座って、能面のような無表情で会社への報告メールを打っていたりしたら、シラケて、乗り気になっていた商談をご破算にするかもしれません。
それを見越して、最後の最後まで、立ち上がったまま、お客から目を切らなかった女性営業。なかなかのやり手ですね。
偶然にしろ、「営業の神髄」を見せてもらったような気がしました。
还是这个语速适合我
文章はどこで見えますか?
Jtalk日语 回复 @謌堅强着: 你好,已更新了,感谢收听!
这么方便就可以学到日语了
能否有双语文稿呢?方便我们学习。
你好可以有日语而且有中文翻译的吗谢谢你