人间失格-太宰治 第三手记2-5

人间失格-太宰治 第三手记2-5

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三昼夜、自分は死んだようになっていたそうです。医者は過失と見なして、警察にとどけるのを猶予してくれたそうです。

据说整整三个昼夜,我就像死掉了一般。医生认为是过失所致,所以一直犹豫着没有报警。


覚醒しかけて、一ばんさきに呟いたうわごとは、うちへ帰る、という言葉だったそうです。

据说我苏醒过来第一句话就是“回家”。


うちとは、どこの事を差して言ったのか、当の自分にも、よくわかりませんが、とにかく、そう言って、ひどく泣いたそうです。

所谓的“家”,究竟指的哪儿,就连我自己也不得而知。总之,听说我是那么说了,并且号啕大哭了一场。


次第に霧がはれて、見ると、枕元にヒラメが、ひどく不機嫌な顔をして坐っていました。

渐渐地眼前的雾散开了,我定睛一看,原来是“比目鱼”一副老大不高兴的样子坐在我的枕边。


「このまえも、年の暮の事でしてね、お互いもう、目が廻るくらいいそがしいのに、いつも、年の暮をねらって、こんな事をやられたひには、こっちの命がたまらない」

“上一次也是发生在年末的时候。这种时候谁不是忙得个团团转呐。可他偏偏爱挑准年末来干这种事,这不是要我的命吗?”


ヒラメの話の聞き手になっているのは、京橋のバアのマダムでした。

在一旁听比目鱼发牢骚的,是京桥那家酒吧的老板娘。 


「マダム」

と自分は呼びました。

“夫人。”我叫道。 


「うん、何?  気がついた?」

 “嗯,有什么事?你醒过来了?” 


マダムは笑い顔を自分の顔の上にかぶせるようにして言いました。自分は、ぽろぽろ涙を流し、

老板娘一边说着,一边把她的那张笑脸贴在了我的脸上。 我不由得泪如泉涌。 



「ヨシ子とわかれさせて」

自分でも思いがけなかった言葉が出ました。

“就让我和良子分手吧。” 

脱口而出的竟是这样一句连我自己也意想不到的话。 


マダムは身を起し、幽かな溜息をもらしました。

老板娘欠起身,流露出轻微的叹息。 


それから自分は、これもまた実に思いがけない滑稽とも阿呆らしいとも、形容に苦しむほどの失言をしました。

接下来我又失言了,而且这一次的失言是那么唐突,简直无法断言到底是滑稽还是愚蠢。


「僕は、女のいないところに行くんだ」

“我要到没有女人的地方去。” 


うわっはっは、とまず、ヒラメが大声を挙げて笑い、マダムもクスクス笑い出し、自分も涙を流しながら赤面の態になり、苦笑しました。

“哈—————”首先是“比目鱼”大声地笑了,然后老板娘也哧哧地笑出了声。最后连我自己也一边流着眼泪,一边红着脸苦笑了起来。


「うん、そのほうがいい」

とヒラメは、いつまでもだらし無く笑いながら、

“唔,那样倒是好呀。”“比目鱼”一直在粗俗地笑着,他说道,



「女のいないところに行ったほうがよい。女がいると、どうもいけない。女のいないところとは、いい思いつきです」

“最好是到没有女人的地方去。要是有女人的话,怎么着都不行,去没有女人的地方,这倒是个好主意呐。”


女のいないところ。しかし、この自分の阿呆くさいうわごとは、のちに到って、非常に陰惨に実現せられました。

没有女人的地方。但我这近于痴人说梦般的胡言乱语,不久居然悲惨地化作了现实。


ヨシ子は、何か、自分がヨシ子の身代りになって毒を飲んだとでも思い込んでいるらしく、以前よりも尚いっそう、自分に対して、おろおろして、

良子似乎一直认为,我是作为她的替身而吞下毒品的,因此在我面前比过去更加手足无措了。


自分が何を言っても笑わず、そうしてろくに口もきけないような有様なので、自分もアパートの部屋の中にいるのが、うっとうしく、つい外へ出て、相変らず安い酒をあおる事になるのでした。

无论我说什么,她都不苟言笑,所以,呆在公寓的房间里我会感到胸闷气短,忍不住又跑到外面酗酒去了。


しかし、あのジアールの一件以来、自分のからだがめっきり痩せ細って、手足がだるく、漫画の仕事も怠けがちになり、

但自从巴比妥酸事件以后,我的身体明显消瘦了,手脚也变得软弱兀立,画漫画稿时也常常偷懒怠工。


ヒラメがあの時、見舞いとして置いて行ったお金(ヒラメはそれを、渋田の志です、と言っていかにもご自身から出たお金のようにして差出しましたが、

那时,作为探望费,“比目鱼”留给我一笔钱(“比目鱼”说“这是我的一点心意”,随即递给我那笔钱,就好像是从他自己的荷包里掏出来的一样。


これも故郷の兄たちからのお金のようでした。

可事实上这也是老家的哥哥们寄来的钱。


自分もその頃には、ヒラメの家から逃げ出したあの時とちがって、ヒラメのそんなもったい振った芝居を、おぼろげながら見抜く事が出来るようになっていましたので、

这时,我已经不同于当初逃离“比目鱼”家时的我了,能够隐隐约约地看穿“比目鱼”那种装腔作势的把戏了,


こちらもずるく、全く気づかぬ振りをして、神妙にそのお金のお礼をヒラメに向って申し上げたのでしたが、

所以我也就能狡猾地装出不知内情的样子,向“比目鱼”道了谢。


しかし、ヒラメたちが、なぜ、そんなややこしいカラクリやらかすのか、わかるような、わからないような、どうしても自分には、へんな気がしてなりませんでした)

但是,“比目鱼”等人干吗要弃简从繁,不直截了当地说出真相呢?其中的缘由我似懂非懂,觉得十分蹊跷)。


そのお金で、思い切ってひとりで南伊豆の温泉に行ってみたりなどしましたが、

我打定主意用那笔钱独自道南伊豆温泉去看看。


とてもそんな悠長な温泉めぐりなど出来る柄ではなく、ヨシ子を思えば侘びしさ限りなく、

不过,我不属于那种能够长时间地绕着温泉悠闲旅行的人,一想到良子,我就感到无限的悲凉。


宿の部屋から山を眺めるなどの落ちついた心境には甚だ遠く、ドテラにも着換えず、お湯にもはいらず、

而我自己与那种透过旅馆房间的窗户眺望山峦的平和心境更是相距甚远,在那里我既没有换穿棉和服,也没有泡温泉澡,


外へ飛び出しては薄汚い茶店みたいなところに飛び込んで、焼酎を、それこそ浴びるほど飲んで、からだ具合いを一そう悪くして帰京しただけの事でした。

只是跑进外面一家并不干净的茶馆似的地方,拼命地喝酒,把身体糟蹋得更加羸弱之后才回到了东京。


東京に大雪の降った夜でした。自分は酔って銀座裏を、ここはお国を何百里、ここはお国を何百里、と小声で繰り返し繰り返し呟くように歌いながら、

那是在一场大雪降临于东京的某个夜晚。我醉醺醺地沿着银座的小巷漫步着,一边小声地反复哼唱着“这儿离故乡有几百里,这儿离故乡有几百里”。


なおも降りつもる雪を靴先で蹴散らして歩いて、突然、吐きました。それは自分の最初の喀血でした。

我一边唱一边用鞋尖踹开街头的积雪,突然间我吐了,这是我第一次吐血。



雪の上に、大きい日の丸の旗が出来ました。自分は、しばらくしゃがんで、それから、よごれていない個所の雪を両手で掬い取って、顔を洗いながら泣きました。

只见雪地上出现了一面硕大的太阳旗。好一阵子我都蹲在原地,然后用双手捧起那些没有弄脏的白雪,边洗脸边哭了起来。


こうこは、どうこの細道じゃ?

こうこは、どうこの細道じゃ?

这儿是何方的小道? 

这儿是何方的小道?


哀れな童女の歌声が、幻聴のように、かすかに遠くから聞えます。

一个女孩哀婉的歌声恍若幻听一般隐隐约约地从远处传了过来。


不幸。この世には、さまざまの不幸な人が、いや、不幸な人ばかり、と言っても過言ではないでしょうが、

不幸。在这个世上不乏不幸之人,不,尽是些不幸之人。即使这么说也绝非过激之辞。


しかし、その人たちの不幸は、所謂世間に対して堂々と抗議が出来、また「世間」もその人たちの抗議を容易に理解し同情します。

但是,他们的不幸却可以堂而皇之地向世间发出抗议,并且,“世间”也很容易理解和同情他们的抗议。


しかし、自分の不幸は、すべて自分の罪悪からなので、誰にも抗議の仕様が無いし、

可是,我的不幸却全部缘于自己的罪恶,所以不可能向任何人进行抗议。


また口ごもりながら一言でも抗議めいた事を言いかけると、ヒラメならずとも世間の人たち全部、よくもまあそんな口がきけたものだと呆れかえるに違いないし、

假如我斗胆结巴着说出某一句近于抗议的话,不仅是“比目鱼”,甚至世间的所有人都无疑会因我口出狂言而惊讶无比的。


自分はいったい俗にいう「わがままもの」なのか、またはその反対に、気が弱すぎるのか、自分でもわけがわからないけれども、

到底我是像俗话所说的那样“刚愎自用”呢?还是与此相反,显得过于唯唯诺诺呢?这一点连我自己都弄不明白。


とにかく罪悪のかたまりらしいので、

总之,我是罪孽的集合体,


どこまでも自らどんどん不幸になるばかりで、防ぎ止める具体策などないのです。

所以,我只可能变得愈发不幸,而这是无法阻止和防范的。 

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