06 ヴィヨンの妻（平野綾）

昨夜はおいてにならなかったの。きました。椿屋のさっちゃんの顔を見ないとこのごろ眠れなくなってね。10時過ぎにここ除いみたら今仕方帰りましたというのでね。それで、止まっちゃいましたよ、ここへ。雨はざんざん降っているし。あたしも今度からこのお店にずっと泊めてもらうことにしようかしら。 いいでしょ、それも。 そうすれば、あの家はいつまでも借りてるのは意味ないもの。 夫は黙ってまだ新聞に目を注ぎ。 ヤァ、まだ僕の悪口を書いている？

コップに午前の日の光が当たって綺麗だと思いました。誰もいないの？夫は私のほうを振り向いて見て。うん、親父はまだ仕入れから帰らないし、婆さんはちょっと今まで受かっての方に行ったようだけど、いませんか？

ヴィヨンの妻、太宰治 その日も私は上部はやっぱり同じ様に坊やを背負ってお店の務めに出かけました。中のお店の土間で夫が酒を入ったコップをテーブルの上に置いて、一人で新聞を読んでいました