20200613 梅雨と花
アジサイ、クチナシ、柿の花……。どれも夏の湿潤な季節に咲く花である。そしてどれもが「思いをこめてしかし決して声高にではなく、むしろ抑え気味に花となるように思えてならない」。そんなふうに随筆家の増田れい子さんが書いていた▼ひそやかな感じが逆に強い印象を人の心に刻む。いわば「マイナスの効果」というようなものを、この季節の花たちは身につけている。なかでもドクダミは際立ってひそやかで、それでいて凄(すご)みのある艶(あで)やかさがあるという▼日陰でも、いや日陰だからこそ映えるドクダミの真っ白な花。それをきれいだと思ったのは、実は今年が初めてである。もしかしたら今まで、その美しくない名前の響きに心が縛られていたのかもしれない▼〈どくだみや真昼の闇に白十字〉川端茅舎(ぼうしゃ)。おとといあたりから関東では、梅雨雲の闇につつまれるようになった。コロナ禍の薄闇も続いており、私たちの生活は曇ったり降ったり、ときに晴れたりを繰り返すのだろうか▼まちに傘の花が咲く季節でもある。学校の授業は再開したものの、曜日に分かれて分散登校しているところもあると聞く。並んで歩いていく花の数も、今年は少なめかもしれない。学ぶことも遊ぶことも普段通りにはいかないが、どうか負けぬよう▼ドクダミには「毒を矯(た)める、止める」の意味があり、十薬(じゅうやく)の別名も持つ。古くから薬用としてだいじにされてきた植物なのだろう。見ていると落ち着くその姿が、心の薬にもなってくれれば。
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