031 《新茶》-- 岡本 かの子

031 《新茶》-- 岡本 かの子

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それほど茶好きでなくとも、新茶には心ひかれる。
 あの年寄りじみた、きつい苦みがないし、晴々しい匂ひがするし、茶といふよりも、若葉の雫を啜るといふ感じである。
 色がいゝ。白磁の茶椀の半を満してゆらめく青湖の水。
  さなりき、誘ふニンフも
  誘はるゝ男妖精も共に髪ぞ青かりし
 揺曳とした湯気の隙間から、茶椀の岸にさういふ美麗が見えるやうな気がする・・・

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