BGM:️ - adan
7、
五日目、またもヒツジのおかげで、王子さまの秘密がひとつ明らかになった。長いあいだ、黙って考えてきた問題がようやく時を得たように、王子さまはいきなり、なんの前置きもなく、僕にたずねた。
第五天,还是多亏了那只羊,帮我揭示了小王子生活的秘密。他没头没脑地问我,好像在静默中沉思冥想了很久忽然憋不住了:
「ヒツジって、小さな木を食ベるんだから、花も食ベる?」
“绵羊,如果它吃小灌木,那它也会吃花啰?”
「ヒツジは出くわしたものを、なんでも食っちまうよ」
“绵羊碰到什么就吃什么。”
「トゲのある花でも?」
“甚至那些有刺的花?”
「そう。トゲのある花でも」
“是的,甚至那些有刺的花。”
「それならトゲは、なんのためにあるの?」
“那刺又有什么用?”
そんなことは知らない。そのとき僕は、かたく締まりすぎているエンジンのボルトをゆるめようと、手が離せないでいた。飛行機の故障はそうとう重大だとわかってきて、気が気ではなかったし、飲み水もなくなりかけていて、最悪の事態におびえてもいた。
我哪儿知道。当时我正忙着松开发动机上一颗拧得太紧的螺丝。我很担心,因为故障看起来很严重,而水也快喝完了,这不由得我不去担心最坏的情形。
「トゲは、なんのためにあるの?」
“那刺,它们又有什么用处?”
小さな王子さまは、一度質問したら、けっしてあきらめない。だが僕はボルトでいらいらしていたので、てきとうに答えた。
问题一旦问了,小王子从来都不会放过。我正被我的螺丝弄得心烦意乱,于是我胡乱回答道:
「トゲなんて、なんの役にも立たない。あれは、花のいじわる以外のなにものでもない」
“刺没有一点用处,那不过是花的恶意。”
「ええ?」
“噢!”
だが一瞬静かになったあと、王子さまはくやしそうに言った。
「そんなの信じない!花は弱いんだ。ものも知らない。でもできるだけのことをして、自分を守ってる。トゲがあれば、みんなこわがると思ってるんだ……」
但沉默了一会儿,他悻悻地对我说:“我才不信你呢!花儿是那么柔弱,那么单纯。它们尽自己的能力保护自己。它们自以为有了刺就会能吓唬人……”
僕はもう答えなかった。このときはこう考えていたのだ。<どうしてもこのボルトがまわらないなら、かなづちでぶったたいてみるか>と。だが王子さまが、また割って入ってきた。
我没回答,那一刻我对自己说:“如果这个螺丝还跟我作对,我就一榔头砸它个稀巴烂。”
「でもきみ、きみはそう思ってるの、花が……」
小王子再次打乱我的思路:“你却以为,那些花……”
「いいや!ちがう!僕はなんにも思ってやしない!てきとうに答えただけだ。大事なことで、忙しいんだ、僕は!」
“不是,才不是呢!我啥也没以为!我随便敷衍你的,我正忙着呢,我可有正经事要做!”
王子さまは、ほう然としてこちらを見っめた。
小王子惊讶得看向了我。
「大事なこと!」
“正经事?!”
かなづちを手に、よごれた機械油で指先をまっ黒にして、変なかっこうに見えているにちがいない物体にかがみこんでいる僕を、王子さまは見ていた。
他看我手里拿着榔头,手指上沾满油污,俯在一个在他看来奇丑无比的玩意儿上。
「おとなみたいな言い方だ!」
“你说话和那些大人一样!”
僕は、少しわれに返って、恥ずかしくなった。でも容赦なく、王子さまは続けた。
这话说得我有些惭愧,他又毫不留情地补充说:
「きみはごちゃ混ぜにしてる……大事なこともそうでないことも、いっしょくたにしてる!」
“你什么都分不清……你把什么都混为一谈!”
王子さまは、本気で怒っていた。風にむかって、金色に透きとおる髪を揺らしながら。
他真的很生气。他摇摇头,金色的头发在风中颤动:
「ぼく、まっ赤な顔のおじさんがいる星に、行ったことがある。おじさんは、一度も花の香りをかいだことがなかった。
“我到过一个星球,上面住着一个红脸先生。他从来没有闻过一朵花。他从来没有看过一颗星星。他从来没有爱过任何人。
星を見たこともなかった。誰も愛したことがなかった。たし算以外は、なにもしたことがなかった。一日じゅう、きみみたいにくり返してた。『大事なことで忙しい!私は有能な人間だから!』そうしてふんぞり返ってた。でもそんなのは人間じゃない。キノコだ!」
除了算账他从来没有做过其他事情。他成天就和你一样反复说:'我是一个正经人,我是一个正经人!’这让他神气十足。但这样的人不是人,是个蘑菇。”
「え?」
“是个什么?”
「キノコだ!」
“蘑菇!”
怒りのあまり、王子さまはまっさおになっていた。
小王子当时气得脸色发白。
「何百万年も昔から、花はトゲをるけている。何百万年も昔から、ヒツジはそれでも花を食べる。
“几百万年以来,花都长刺。但几百万年来羊还是要吃花。
なんの役にも立たないトゲをつけるのに、どうして花があんなに苦労するのか、それを知りたいと思うのが、大事なことじゃないって言うの?
搞清楚为什么花儿要费那么大的劲去长一无是处的刺,这难道不是正经事?
ヒツジと花の戦いが、重要じゃないって言うの?赤い顔の太ったおじさんのたし算より、大事でも重要でもないって言うの?
难道羊和花之间的战争不重要?这难道不比一个红脸大胖子先生的账目更重要?
ぼくはこの世で一輪だけの花を知っていて、それはぼくの星以外どこにも咲いていないのに、小さなヒツジがある朝、なんにも考えずにぱくっと、こんなふうに、その花を食べてしまっても、それが重要じゃないって言うの!」
如果我认识一朵世界上独一无二的花,除了在我的星球哪儿都没有,而一只绵羊一下子就毁了它,在一个早上,就这么稀里糊涂的毁了它,这难道不重要?"
王子さまは、今や顔を紅潮させていた。そして続けた。
他涨红了脸,又说:
「もしも誰かが、何百万も何百万もある星のうち、たったひとつに咲いている花を愛していたら、その人は星空を見つめるだけで幸せになれる。<ぼくの花が、あのどこかにある>って思ってね。
“如果一个人爱上了一朵宇宙繁星里独一无二的花,这足以让他在看这些星星的时候感到幸福。他会对自己说:我的花就在那里,在某颗星上……
でも、もしその花がヒツジに食ベられてしまったら、その人にとっては、星という星が突然、ぜんぶ消えてしまったみたいになるんだ!それが重要じゃないって言うの!」
“如果一个人爱上了一朵宇宙繁星里独一无二的花,这足以让他在看这些星星的时候感到幸福。他会对自己说:我的花就在那里,在某颗星上……’但如果绵羊吃掉了那朵花,这在他看来就好像所有的星星一下子都熄灭了!这难道不重要吗?!”
王子さまは、それ以上なにも言えなくなった。そうして不意に、泣きじゃくりだした。あたりは夜になっていた。僕の手から工具が落ちた。かなづちもボルトも、のどの渇きも死も、僕にはもうどうでもよかった。
他再也说不出话来,忽然泣不成声。黑夜已经降临。我也已经放下了我的工具。我不再理会铁锤、钉子、口渴和死亡。
ある星に、惑星に、僕の星に、地球に、なぐさめてあげなければいけない小さな王子さまがいるのだから!
在一颗星球上,在一颗行星上,在我所在的行星上,在地球上有一个小王子要安慰!
僕は王子さまを抱きしめた。やさしく摇すった。そして言った。「きみが愛している花は、危ない目になんかあわないよ……僕がきみのヒツジに、ロ輪を描いてあげる……きみの花には、身を守るものを描いてあげる……僕が……」
我把他抱在怀里,轻摇着他,我对他说:“你爱的那朵花不会有危险的……我会给你的羊画一个嘴套……我会给你的花画一副盔甲……我……”
だがそれ以上、なにを言えばいいのか、僕にはわからなかった。自分がひどく不器用になった気がした。
我不知道该说些什么。我觉得自己很笨拙。
どうすれば王子さまの心に届くのか、そうしてふたたび気持ちが通うようになるのか、わからなかった……まったくもって謎につつまれている、淚の国というものは!
我不知道该如何接近、抚慰他的心灵……泪水的国度是多么神秘啊!
绵羊吃树也能吃花呀