发现快乐,寻找喜悦【楽しみの発見・よろこぶ工夫】

发现快乐,寻找喜悦【楽しみの発見・よろこぶ工夫】

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楽しみの発見・よろこぶ工夫
 
「最近、何か楽しいことはあった?」こうたずねられたとき、「どうかな、特別に楽しいことはなかったな」などと、あっさり答える人がいます。そのたび、僕は、ああもったいないなと思うのです。楽しみは、発見するもの。よろこびは、工夫から生まれると僕は信じています。
息をつく間もない忙しさ、気持ちのごたごた、どうみても大変な仕事―こんなときこそ、楽しみを発見しましょう。そうしなければ、山みたいにそびえたつプレッシャーを乗り越えるのは、よけいに苦しくなります。
“最近有什么开心的事吗?”遇到这样的问题,常有人随意应付:“嗯,好像没什么特别开心的事儿。”每当这种时候,我都禁不住为他可惜。因为,乐趣得靠自己去发现。我相信,快乐源自于所下的工夫。
忙得喘不过气、心情烦躁、工作难缠──越是在这种情况下,越应该去挖掘乐趣所在。若不然,压力会像座高山横亘在眼前,要翻越过去只会痛苦加倍。
 
僕はそれを、本物の山の中で知りました。『プルータス』という雑誌の仕事で、アメリカのトレッキング・ルートを旅したときのことです。そこはジョン・ミューア・トレイルという、踏破するには一か月かかる長い歩道でした。
ヨセミテ渓谷につながる道は、標高三千から四千メートル級。いくつもの国立公園に囲まれ、厳格に保護された自然の中を歩く行程は、きついものでした。
这个道理我是在真正的大山中体会到的。我为了《BRUTUS》杂志的工作,曾在美国的约翰·缪尔步道(John Muir Trail)进行过山地徒步旅行,走完全程得花上一个月时间。
通向优胜美地山谷(Yosemite Valley)的道路,其海拔为三千至四千米,沿途经过数座国家公园,自然环境受到了严密的保护,徒步其中甚至艰辛。
 
僕はそもそも、シャワーも浴びられず、わざわざつらい思いをして山道を歩くといったアウトドアが苦手です。「そこでしか見られない景色が見たい」という思いで旅すると決めたものの、なかなか乗り気になれません。その状況でどうやって自分の気分を盛り上げていくか―これが何より肝心な準備でした。
我向来不喜欢这种连澡都洗不成的自讨苦吃的山地徒步之类的户外活动。出行前虽然下定决心,想见识所谓的“唯有此处才能领略的风景”,但仍是提不起劲。在这种状况下,要如何振奋自己的心情,便是最最要紧的事前准备。
 
歩く目的の旅であれば、一番大切なものは靴でしょう。出発は夏でしたが、僕は春先にサンフランシスコを訪れました。市街から遠く離れた山の中に、世界一履き心地のいい靴をつくる「マレイスペースシュー(Murray Space Shoe)」があります。
友人でもある店主のフランクさんに、今年の夏はこんな行程でこういう場所を歩くという話をし、登山ブーツ用に石膏の足型をとってもらって帰ってきました。すべて注文してからの手作業なので、仕上がるのは一か月後です。
既然这次旅行旨在徒步,那么最重要的工具自然是鞋子。出发时间在夏季,初春时我特意去了一趟旧金山,在远离市区的山中,有一家制鞋铺“Murray Space Shop”,订做全世界最好穿的鞋。
店主法兰克先生是我的朋友,我告诉他今年夏天的徒步行程,他用石膏制作登山鞋要用的脚模,然后打道回府。订购之后开始手工制作,完工需要一个月。
 
僕のふるまいを、馬鹿げたことだと思う人もいるかもしれません。たかが靴のために飛行機に乗ってサンフランシスコまで行き、レンタカーを借りて山道を三時間も走り、注文だけして帰ってくるなんて、酔狂だと笑われることもあります。
或许有人会认为此举可笑之极。也有人笑我没事找事,居然为了一双鞋子特地飞到旧金山,再租车开三小时山路,下了订单就返回了。
 
しかし世界に一足しかない、自分の足の形にぴったりと合った靴は、過酷な道のりを歩くときのお守りになってくれました。
「山の中で絶対に足のことで困らないように」
フランクさんがそんな思いやりを込めて、プロとしての確かな腕でつくりあげた靴なのです。一歩踏みしめるごとに、彼への信頼が深くなりました。
这双全球仅此一双的、完全合脚的鞋子,在严酷的徒步征程中成了我的护身符。
“爬山时绝不会因为脚部不适而困扰。”
这双鞋是法兰克先生怀着这份心意,使出工匠的看家本领做出来的。因此我穿着它每踏出一步,都加深了我对他的信赖。
 
僕はやがて歩きながら、「山を下りたら、フランクさんのところに寄ろう。この靴がどんなに頼もしい味方になってくれたか、話をしてお礼を言おう」と考えながら歩いていました。靴をつくってもらう―このひと手間で、僕はフランクさんとともに旅する楽しみを発見しました。登山靴をあつらえることで、歩くというルーティンをよろこべるような工夫をしたからこそ、つらい道を歩きとおせたのです。
我一边走一边想:“下山后,顺路去找法兰克先生吧,告诉他这双鞋是如何忠实地陪伴我,并向他道谢。”请人做鞋──通过这件事,我体会到了和法兰克先生一同旅行的乐趣。正是通过订制登山鞋,在徒步这样一个单调的行为中加进一些让人愉悦的巧思,我才得以走完这趟艰辛的路途。


もうひとつの工夫として、僕は山に、ヒノキでできた漆(うるし)のおわんを持っていきました。

山の中の食事といえば、缶詰やフリーズドライ食品をアルミや鉄の食器で食べるのが普通です。「そういうものだ」と受け入れてしまえばそれまでですが、味気ないのは確かでしょう。そこで僕は、軽くて上等のおわんを持っていこうとひらめいたのです。

我的另一个别出心裁是,带了一个桧木制漆碗上山。

在山里吃饭,往往是使用铝制或铁制餐具吃罐头或冻干食品。如果接受“山上吃饭就是这样的”,自然也无可厚非,但这种吃法很无趣却也是事实。于是我灵机一动,决定带个轻巧、上好的木碗上山。 


聞くところによると、本当に高級なおわんは、昔はヒノキで作られていたそうです。しかし、ヒノキを加工するのはとても難しい職人技なので、今、巷(ちまた)に出回っている品は、たとえ一級品でもケヤキ素材だといいます。

听说以前真正高级的木碗都是桧木制成的。但是,由于加工桧木是高难度的工匠手艺,据说如今坊间在售的木碗,即便是高级品,也是榉木材质的。


「なんとかヒノキで、昔ながらのおわんを作ってくれる職人さんがいないものか」

一生懸命に調べたところ、たった一人、昔ながらのやりかたでヒノキのおわんを作っている職人さんを捜し当てました。その昔、お坊さんは、食事もお茶もおわんひとつですませたといいます。僕も一生使いつづける気持ちで、とびきりのおわんを作ってくださいとお願いしました。それを初めて使う場を山の中にしたのです。

“有没有师傅能用桧木给我做一个以前的那种木碗呢?”

我拼命调查后总算找到了一位师傅,一直坚持延用古法制作桧木碗。听说从前和尚不管是吃饭还是喝茶,都用同一个碗。我也带着“要用上一辈子”的心情,恳请师傅帮我做一个上好的碗。然后决定要在山里第一次使用这个木碗。


「地べたに座って最高級のおわんでいただくご飯は、どんな味がするだろう?」

そんな好奇心もありました。果たして、山の中で漆塗りのヒノキのおわんと匙(さじ)を使っていただくスープは、極上の口当たりだったのです。

我也很好奇,席地而坐用最高级的碗吃起饭来会是什么味道。果不其然,在山中使用桧木漆碗和汤匙所喝的汤,口感极好。 


大変なときこそ、小さなよろこびを持ち込む工夫をしましょう。仕事でも私的なことでも、好奇心があれば乗り切れます。わざわざ山の中に行かなくても、毎日を工夫と発見の場にするチャンスは、いっぱい探せると思うのです。

越是艰难的处境,就越应该下工夫制造一些让自己愉悦的契机。不管是工作还是日常生活,只要具备好奇心,困境即可迎刃而解。用不着特意上山,我认为每一天都可以找到很多机会去运用巧思、发现喜悦。


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