女生徒(七)

女生徒(七)

00:00
01:45

    結局は、私ひまなもんだから、生活の苦労がないもんだから、毎日、幾百、幾千の見たり聞いたりの感受性の処理が出来なくなって、ポカンとしているうちに、そいつらが、お化けみたいな顔になってポカポカ浮いて来るのではないのかしら。

 

 食堂で、ごはんを、ひとりでたべる。ことし、はじめて、キウリをたべる。キウリの青さから、夏が来る。五月のキウリの青味には、胸がカラッポになるような、うずくような、くすぐったいような悲しさが在る。ひとりで食堂でごはんをたべていると、やたらむしょうに旅行に出たい。汽車に乗りたい。新聞を読む。近衛さんの写真が出ている。近衛さんて、いい男なのかしら。私は、こんな顔を好かない。額《ひたい》がいけない。新聞では、本の広告文が一ばんたのしい。一字一行で、百円、二百円と広告料とられるのだろうから、皆、一生懸命だ。一字一句、最大の効果を収めようと、うんうん唸《うな》って、絞《しぼ》り出したような名文だ。こんなにお金のかかる文章は、世の中に、少いであろう。なんだか、気味がよい。痛快だ。


      说到底可能还是因为我太闲了,无须为生活奔波操劳,所以我应付不了每天看到听到的这成百上千种的感受,在我茫然发呆的时候,它们就趁机化作妖怪般的面孔啪啪地浮现出来,应该是这样的吧。

      一个人在食堂吃饭。今年第一次吃黄瓜。看到黄瓜的青绿色就知道夏天来了。五月的黄瓜的涩味里含着悲伤,是内心空洞洞的、针扎一般疼痛的、很难为情的那种悲伤。一个人在食堂吃饭的时候就会特别想出去旅行。想去坐火车。再看看报纸。上面登着近卫氏的照片。近卫难道是个好男人吗?我不喜欢他那种相貌。额头长得不好。报纸上最让人开心的是书的广告。估计是一字一行都要花上一两百日元广告费的缘故,大家都煞费苦心。每一个字每一句话都想收到最大效果,反复吟读之后才绞尽脑汁挤出这样的名句。如这般费钱的文章,世上怕也少有。读来总觉得心情舒畅。真是愉快。


注:

近卫文麿(1891—1945),日本第三十四、三十八、三十九任首相,日本侵华战争的主要发动者,二战后被指控为战犯,服毒自杀。

以上内容来自专辑
用户评论

    还没有评论,快来发表第一个评论!