女生徒(四)

女生徒(四)

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    けさから五月、そう思うと、なんだか少し浮き浮きして来た。やっぱり嬉《うれ》しい。もう夏も近いと思う。庭に出ると苺《いちご》の花が目にとまる。お父さんの死んだという事実が、不思議になる。死んで、いなくなる、ということは、理解できにくいことだ。腑《ふ》に落ちない。お姉さんや、別れた人や、長いあいだ逢わずにいる人たちが懐《なつ》かしい。どうも朝は、過ぎ去ったこと、もうせんの人たちの事が、いやに身近に、おタクワンの臭《にお》いのように味気なく思い出されて、かなわない。

 

    ジャピイと、カア(可哀想《かわいそう》な犬だから、カアと呼ぶんだ)と、二匹もつれ合いながら、走って来た。二匹をまえに並べて置いて、ジャピイだけを、うんと可愛がってやった。ジャピイの真白い毛は光って美しい。カアは、きたない。ジャピイを可愛がっていると、カアは、傍で泣きそうな顔をしているのをちゃんと知っている。カアが片輪だということも知っている。カアは、悲しくて、いやだ。可哀想で可哀想でたまらないから、わざと意地悪くしてやるのだ。カアは、野良犬みたいに見えるから、いつ犬殺しにやられるか、わからない。カアは、足が、こんなだから、逃げるのに、おそいことだろう。カア、早く、山の中にでも行きなさい。おまえは誰にも可愛がられないのだから、早く死ねばいい。私は、カアだけでなく、人にもいけないことをする子なんだ。人を困らせて、刺戟する。ほんとうに厭な子なんだ。縁側に腰かけて、ジャピイの頭を撫《な》でてやりながら、目に浸《し》みる青葉を見ていると、情なくなって、土《つち》の上に坐りたいような気持になった。


      从今天早晨起就是五月了,想到这里,竟有些喜不自胜。真的很开心呢,觉得夏天已经近了。走出房间到院子里去,就看见草莓花开得正好。爸爸去世这一事实变得不可思议起来。死了,不在了,这事儿实在很难理解。让人无法理会。想起姐姐、和我分开的那些人、很长时间没见的那些人,很是怀念。早晨总是会不自觉地想起过去的事情,想起那些久远的人和事,总觉得如在身旁,想起来时的感觉就像腌咸萝卜的味道那般索然无味,让人觉得不满足。


      恰皮和可儿(因为它是一只可怜的狗,所以叫它可儿)这两只狗搭伴跑过来。我让它们在我面前排好,然后就只使劲儿爱抚恰皮。恰皮满身雪白的毛闪着光,真好看。可儿就很脏。我这样宠爱恰皮,可儿在旁边看着都快要哭出来了,这些我都清楚。我也知道可儿身有残疾。可儿很可悲,很令人讨厌。我就是觉得它可怜得让人受不了,所以才故意不对它好。可儿看起来像一只野狗,不定什么时候就会被打狗的杀掉吧。可儿的腿又是这副样子,那它逃起来肯定很慢吧。可儿呀,你还是尽早跑到山林里去吧。谁都不喜欢你,所以你早点儿死掉也好。我就是这样一个女孩儿,不仅是对可儿,对人也会做那些不该做的事情。我会难为别人,刺激别人。真是一个令人讨厌的孩子。坐在廊下,抚摸着恰皮的头,望着满眼青翠欲滴的绿叶,忽然觉得自己很没出息,真想直接坐到泥土上去。

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