女生徒(二)

女生徒(二)

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朝は、意地悪《いじわる》。

「お父さん」と小さい声で呼んでみる。へんに気恥ずかしく、うれしく、起きて、さっさと蒲団《ふとん》をたたむ。蒲団を持ち上げるとき、よいしょ、と掛声して、はっと思った。私は、いままで、自分が、よいしょなんて、げびた言葉を言い出す女だとは、思ってなかった。よいしょ、なんて、お婆さんの掛声みたいで、いやらしい。どうして、こんな掛声を発したのだろう。私のからだの中に、どこかに、婆さんがひとつ居るようで、気持がわるい。これからは、気をつけよう。ひとの下品な歩き恰好《かっこう》を顰蹙《ひんしゅく》していながら、ふと、自分も、そんな歩きかたしているのに気がついた時みたいに、すごく、しょげちゃった。

 朝は、いつでも自信がない。寝巻のままで鏡台のまえに坐る。眼鏡をかけないで、鏡を覗くと、顔が、少しぼやけて、しっとり見える。自分の顔の中で一ばん眼鏡が厭《いや》なのだけれど、他の人には、わからない眼鏡のよさも、ある。眼鏡をとって、遠くを見るのが好きだ。全体がかすんで、夢のように、覗き絵みたいに、すばらしい。汚ないものなんて、何も見えない。大きいものだけ、鮮明な、強い色、光だけが目にはいって来る。眼鏡をとって人を見るのも好き。相手の顔が、皆、優しく、きれいに、笑って見える。それに、眼鏡をはずしている時は、決して人と喧嘩《けんか》をしようなんて思わないし、悪口も言いたくない。ただ、黙って、ポカンとしているだけ。そうして、そんな時の私は、人にもおひとよしに見えるだろうと思えば、なおのこと、私は、ポカンと安心して、甘えたくなって、心も、たいへんやさしくなるのだ。



早晨,真是可恶。

我轻轻叫了声“爸爸”。莫名觉得有些不好意思,又很高兴,起来迅速地叠好被子。抱着被子起身时喊了声“嗨哟”,不由吃了一惊。这之前我从不认为自己是会说出“嗨哟”这种粗鄙话语的女子。“嗨哟”这类词听起来像是老太婆的口头语,让人生厌。为什么会发出这样的声音呢?就像是我体内某个地方住着一个老婆婆似的,真不舒服。今后得注意。就好像正在皱着眉头鄙视别人粗笨的走路姿势呢,转眼却发现自己走路也是那种姿势,实在是令人沮丧。

早晨,我总是很不自信。穿着睡衣径自坐在梳妆台前。不戴眼镜望向镜子时,面部稍显朦胧,显得很是文静。自己脸上最讨厌的就是眼镜了,但眼镜又有它不为人知的妙处。我喜欢摘下眼镜去看远处。整个都模模糊糊的,像梦,像西洋镜,美极了。看不到任何肮脏的东西。入眼的只有那些庞大的物体,那些鲜明、强烈的光和色。我还喜欢摘下眼镜去看人。看起来对方都是面带着笑容,和蔼、优雅。而且不戴眼镜的时候绝不会产生想要跟人吵架这类的念头,也不想说人坏话。就只是默默地发呆而已。还有,想来那时的我在别人眼里应该也是温柔可亲的吧,于是乎我完全放下心来,甚至想顺势撒个娇,内心也就柔软了许多。

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