用宁静、温馨故事陪你度过喧嚣的下班路
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朗读者:木村多江
慌ただしく過ぎていく時の波に ふと 足元を掬われそうになった時 必ず 紐解く本があります。その本にはある女性の人生が描かれています、どこにでもあるごく普通の人生。でも 本の中の彼女に出会うと、心に湖に波紋が幾重にも広がるように、ゆっくりと優しい言葉が満ちていきます。今日は どんな彼女に会えるでしょうか。
Sound Library~世界に一つだけの本
朗読は わたくし 木村多江がお送りいたします。
私の名前は月原かな子、38歳、旅行会社に勤めている。
私が苦手な質問 それは「あなたの趣味はなんですか」。私には趣味がない。唯一の趣味だった旅は仕事になり、映画鑑賞も 読書も 趣味と呼ぶには日常的すぎだ。元々 何をやっても長続きしない、よく母に怒られた。書道だって ピアノだって 大好きだったはずのバレーでさえ いつの間にかやめてしまった。
物を集めた記憶もない。今も友達がご当地キティやご当地キューピーを集めているのに協力をするけれど、自分で買ったことはなかった。でも 一つだけ12年続けていることがあった。それは旅の絵日記。小さなスケッチブックに黒いペンで輪郭をしるす。それに水性の色鉛筆で色をつける。旅をしたその土地の水で色を溶かす。絵を習ったことはないし、小さい頃から美術の点数はけっしてよくなかった。下手でもいい、大切なのは 風景を白い紙に留めること。だから、スケッチのペンの線が曲がっても気にしない、描き直さない、色が変な風に滲んでも構わない。日頃 きちんと物を見る習慣が抜き落ちている。花びらや空の色、お寺の屋根や人の顔、じっくり見ることは少ない。旅でも写真を撮ると すっかり安心してしまう。
絵を描こうと思うと 対象と対峙しなくてはならない。花びらはすべて同じ色ではないし、お寺の屋根には大工さんの技術や工夫が隠されている。物を見る練習のつもりで 絵描き始めた。初めて旅先で絵日記を描いたのは1998年の初夏。ツアーで行ったスペインマドリードのコロン広場だった。
スペインマドリードのコロン広場にたどり着いた時 私は落ち込んでいた。自由行動の午後、アルカラ通りですりにあったのだ。しっかりたすぎがけしたバッグから財布をすられた。少しのお金しか入っていなかったから 大事には至らなかったけれど、その財布は 買ったばかりのお気に入りだった。何より 気分が損なわれた。初めて訪れる憧れの町。でも その町に歓迎されていないようでな気がして、悲しかった。
すっかりブルーに引きずって 広場に辿り着く。木々の緑は鮮やかで 吹き抜ける風が心地よかった。おしゃれな木のベンチがあったので 座る。つい「あ〜あ〜」と声が出る。しばらく広場を行き交う人をぼんやり眺めていたら 自分の目の前に 素敵な街灯があることに気がついた。三つのランプを細い手で支えたレトロの佇まい、まるでずっとここに立って私を待っていてくれたような懐かしさ。「あ〜これいいな」と思った。バッグからスケッチブックを取り出す、いつか描こうと準備していた絵日記セット。私は徐ろに黒いペンでその街灯を描き始めた。
緑の植え込みにしっかり立つ街灯。いつしか 私の心は真っ白になっていた。風に吹かれながら ペンを走らせ 色をつけた。街灯の支柱はレンガ色だったけれど、私はオレンジ色を選んだ。スペインの日の光は濃い影を作った。
ふっととなりを見ると銀色の眼鏡をかけた品の良さそうなおばあさんが座っていた。彼女はニコニコしながら 私の絵を見ている。この広場の近くに住んでいる そんなカジュアルな雰囲気だ。私は色鉛筆を溶かしたくて 深く考えずに隣のおばあさんに「アクワ」と言いた。
「水です、この鉛筆を溶かすために水が必要なんです。」とたどたどしい英語で言った。おばあさんの顔が一変した。ただならぬ形相に変わる。私の手をつかんで「よし、話は分かった。何も心配しなくていい、私に任せなさい」そんな覚悟に満ちた様相でその場を立ち去った。
「あのう、そんなに深刻なことでもないですけど」と思いながら、私はスケッチを置いた。大きく深呼吸して空を見た。どこまでも青い空に飛行機雲の白い線、いい広場だなぁと思った。
10分ほど経って 数人の人に囲まれた。先のおばあさんがみんなに何やら説明している。そして おばあさんは私にペットボトルに入った水を差し出した。ある男性が私の脈を見る、ある女性は濡れたタオルを私の首に当てる。いきなりひやっとして仰け反る。
「何?いったい何が起きたの?」
おばあさんがとにかく水を飲めて促す。その勢いに押されて 水を飲む。絵の具 溶かしたかっただけなんだけどなあと思いながら 水を飲む。事態が呑みこめてきた。どうやら 私は日射病にかかり今すぐにでも水を飲まないと倒れてしまう。おばあさんは そう判断したらしい。不得手な英語が誤解を生んだのかもしれません。
「グラシアス!グラシアス!」と 何度も頭を下げ
「いいから いいから」とベンチに横になることを勧められる。
「いや、本当大丈夫ですから」と、ついに日本語で訴えても、結局 ベンチで横になる。
おばあさんは私の額に手を乗せた。その手はガサガサしていたけれど 大きくてあったかい。小さい頃 熱を出して寝た時の懐かしい甘えが身体中に満ちてくる。「まあいいか、そういうことにしておきましょう」私は一人呟く、目を閉じる。おばあさんの手のひらを感じながら 緑のにおいを嗅いだ。なんだか 笑いできた。私が微笑むと 取り囲んだ人たちから拍手が起きた。「大げさだよ」また日本語で話してみる。
目を開けると おばあさんの笑顔に出会った。「ありがとう」日本語で言った。
「いいんだよ。困ったときは お互い様」早口のスペイン語、私には そう聞こえた。
起き上がった私に おばあさんは「この街灯の支柱はオレンジじゃなく このレンガ色だよ」と色鉛筆を指差す。
「いいえ、おばあさん、私にはオレンジなんです。この町も この街灯も あなたの笑顔も 私にはオレンジ色なんです」
みんなが去った後、ペットボトルの水で色を溶かした。この水のことはきっと忘れない、コロン広場の風も おばあさんの手のひらも きっと忘れない。そう思いながら 私は滲んでいく色立ちをそよ風に委ねた。
「Sound Library~世界に一つだけの本」
作・構成 北坂昌人
朗読は わたくし 木村多江でお送りいたしました
(本集完)
让人很平静的声音
木村先生の声はとても癒されます。
背景音乐少点、小声点更好
優しいな。
非常好听。以前就喜欢木村多江,演技超棒。没想到她的广播剧也很动听。
多语研习社 回复 @SHERRY哀殿: 是的,她演技很好声音也好