作品:それから
作者:夏目漱石
朗读声优:田中理惠
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「僕は今更こんな事を貴方に云うのは、残酷だと承知しています。それが貴方に残酷に聞こえれば聞こえる程僕は貴方に対して成功したも同様になるんだから仕方がない。その上僕はこんな残酷な事を打ち明けなければ、もう生きている事が出来なくなった。つまり我儘です。だから詫るんです」
「残酷では御座いません。だから詫まるのはもう廃して頂戴」
三千代の調子は、この時急に判然した。
沈んではいたが、前に比べると非常に落ち着いた。然ししばらくしてから、又
「ただ、もう少し早く云って下さると」と云い掛けて涙ぐんだ。
代助はその時こう聞いた。――
「じゃ僕が生涯黙っていた方が、貴方には幸福だったんですか」
「そうじゃないのよ」と三千代は力を籠めて打ち消した。
「私だって、貴方がそう云って下さらなければ、生きていられなくなったかも知れませんわ」
今度は代助の方が微笑した。
「それじゃ構わないでしょう」
「構わないより難有いわ。ただ――」
「ただ平岡に済まないと云うんでしょう」
三千代は不安らしく首肯いた。代助はこう聞いた
「三千代さん、正直に云って御覧。貴方は平岡を愛しているんですか」
三千代は答えなかった。見るうちに、顔の色が蒼くなった。
眼も口も固くなった。凡てが苦痛の表情であった。代助は又聞いた。
「では、平岡は貴方を愛しているんですか」
三千代はやはり俯つ向いていた。
代助は思い切った判断を、自分の質問の上に与えようとして、既にその言葉が口まで出掛った時、
三千代は不意に顔を上げた。その顔には今見た不安も苦痛も殆んど消えていた。
涙さえ大抵は乾いた。頬の色は固より蒼かったが、唇は確として、動く気色はなかった。
その間から、低く重い言葉が、繋がらない様に、一字ずつ出た。
「仕様がない。覚悟を極めましょう」
代助は背中から水を被った様に顫えた。
社会から逐い放たるべき二人の魂は、ただ二人対い合って、互を穴の明く程眺めていた。
そうして、凡てに逆って、互を一所に持ち来たした力を互と怖れ戦いた。
しばらくすると、三千代は急に物に襲われた様に、手を顔に当てて泣き出した。
代助は三千代の泣く様を見るに忍びなかった。肱を突いて額を五指の裏に隠した。
二人はこの態度を崩さずに、恋愛の彫刻の如く、凝としていた。
“我知道到现在还向你说这种话,很残忍。在你听来越觉得残忍对我来说却越是成功。而且如果不向你坦露这些的话,我就活不下去了。归根结底这只是为了满足自己,所以我要道歉。”
“这并不残忍。所以请不要道歉。”
三千代的语气突然变得明确起来。
虽然还很消沉,却比之前平静了许多。然而过了不久又说道
“只是,如果能早点跟我说的话...”说到一半已是泪眼婆娑。
此时代助问道——
“那么比起现在这样,你宁愿让我把这些话一辈子藏在心里吗?”
“才不是那样”,三千代断然否定
“如果没能听到你的这番话,可能我也活不下去了。”
这次代助露出了微笑。
“那就没什么可在乎了吧”
“你有这份心意我很感激。只是——”
“只是觉得对不起平冈?”
三千代不安地点点头。代助问——
“三千代,说实话,你真的爱平冈吗?”
三千代没有作答。眼看脸色渐渐变得苍白。
眼睛和嘴巴也僵住了。满脸痛苦的表情。代助接着问道:
“那么,平冈爱你吗?”
三千代依然低头不语。
代助用自己大胆的猜测来逼问对方,当他说完这些后,
三千代突然抬起了头。之前脸上的不安和痛苦几乎全部消失了。
泪水也基本干涸了。面色虽然依旧苍白,嘴角却毫无动摇
接着用低沉的语气一字一顿地说道:
“没办法了,下定决心吧”
代助像是背后被浇了凉水一般打了个寒战
本应被社会放逐的两人的灵魂交融在一起,彼此洞察了对方的真心
然后,两人决定齐力反抗一切,同时也对这份交融的力量怀揣着畏惧。
过了片刻,三千代像是受了什么冲击,捂住脸哭了起来。
代助扶额,不忍心看三千代哭泣的模样。
两人就这样僵在那里一动不动,宛如一座名为恋爱的雕像。
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